RESEARCH GUIDE / 2026.09.16
性欲は「相手ごと」に
固定されるのか?
「一人では性欲があるのに、パートナーには湧かない」「恋人がいても別の人が気になる」という経験は、性欲を一つの点数だけで表すと読み違えやすくなります。パートナーへの欲求、代替対象への関心、一人での欲求・行動、実際の行動と同意を分け、カップル研究の対象と限界を確認します。日々の相互作用だけでなく、家事分担やジェンダー観も関係の文脈として扱いますが、関連を原因や義務には変換しません。
「パートナーへの欲求がない」を一つの原因や判定にしない
2024年の研究では、結婚したばかりの人の42日分の日記で、普段より代替対象への関心が高い日ほど、パートナーへの性欲も高いという個人内の関連が報告されました。別の実験では、代替対象への性欲を思い出す課題を行った人は、対照条件よりパートナーへの性欲を高く報告しました。
ただし、これは「誰でもパートナーと他の対象に同じ欲求を持つ」「他の人への関心が関係を良くする」「パートナーへの欲求がないのは問題ではない」という意味ではありません。2025年の研究では、日々のパートナーとの相互作用や、欲求を一人の特性ではなく関係の中の状態として測る視点も示されています。
2026年の韓国の2波研究は、一般的な性欲とパートナー特異的な性欲を分けました。一般的な性欲は関係のウェルビーイングと負に、パートナー特異的な性欲は正に関連しましたが、約1.5年の縦断分析で満足度の変化を予測する証拠は限定的でした。関連の向きだけで「一般的な性欲が悪い」「パートナーへの欲求が関係を保証する」とは読めません。
2025年の研究では、恋愛関係に6か月以上いる女性829人を対象に、性欲と「男性は強く、女性は弱く欲する」といった異性愛スクリプトを質問票で測りました。欲求を高く報告した女性ほどスクリプトの支持が低く、とくに「男性の性欲は女性より高い」という信念が強く関連しました。これは信念を変えれば欲求が上がるという実験結果ではなく、性欲を生物学的な男女差だけで説明しないための関連研究です。
2026年の研究では、男性パートナーがいる女性・ジェンダー/セックス・マイノリティ女性174人について、性的な圧力の頻度と、一般的なパートナーへの欲求・直近4週間のパートナーへの欲求を分けました。圧力が多いほど両方の欲求が低い関連があり、関係期間が長いほど関連が強くなる傾向でした。これは安全・同意の問題を本人の「性欲の故障」へ帰さないための研究で、圧力を関係改善の方法として扱う結果ではありません。
また、2026年の統合分析は、恋愛関係にある人を対象にした28の横断データセット(11,841人)と8つの日々の経験データセット(1,827人、毎日の報告18,321件)をまとめました。性的満足度は女性が男性よりわずかに高く、効果は小さいものでした(r=.08)。この差は性行動の頻度、全般的な関係満足度、パートナーの性的な楽しさだけでは説明されませんでしたが、これは性欲の高さを測った結果ではありません。満足度と欲求を分ける比較材料です。
「誰に向いた欲求か」を研究ごとに分ける
| 研究 | 対象・方法 | 測ったもの | 主な読み方 |
|---|---|---|---|
| Human Nature 2024・Study 1 | 新婚の98組、最終分析196人。結婚後2年の3波、各14日の日記。 | その日のパートナーへの性欲、代替対象への関心。 | 同じ人の普段との差を比べると、代替対象への関心が普段より高い日ほどパートナーへの欲求も高かった。日記だけでは因果は決めない。 |
| Human Nature 2024・Study 2 | 6か月以上の長期関係にある成人。最終分析405人、平均42.79歳。3条件への無作為割付。 | パートナーまたは代替対象への性欲を想起させる課題後の、二つの対象への欲求。 | 代替対象への性欲を想起した条件は、対照条件よりパートナーへの欲求が高かった。パートナー想起から代替対象への増加は同じ形では支持されなかった。 |
| Journal of Sex Research 2025 | 混合性別のカップル163組、N=326。平均30.3歳。22日間の日記、一部に相互作用課題。 | パートナーへの日々の欲求、愛着・性・探索のニーズを満たす相互作用。 | 日々の欲求の上下は、各パートナーが何を与え、受け取り、満たしたと感じたかと関連した。欲求を固定的な個人特性だけで見ない。 |
| Archives of Sexual Behavior 2022 | 単身者・交際中の人を含む予備研究n=572、追跡研究N=1,238。関係状態と性別をまたぐ尺度検証。 | 一人の欲求・行動、パートナーとの欲求・行動、性的満足度。 | 交際中の人では、パートナーに関わる欲求が高く、一人の欲求が低いことが満足度と関連した。欲求と行動頻度、希望と実際も別に測られた。 |
| Archives of Sexual Behavior 2026 | 結婚へ移行する韓国の交際中の成人。Time 1は1,058人、Time 2は約1.5年後の655人。完全な二者データは501組・289組。 | 一般的な性欲、パートナー特異的な性欲、関係のウェルビーイング、関係・性的満足度。 | 横断的には一般的な性欲は関係のウェルビーイングと負に、パートナー特異的な性欲は正に関連。縦断的に満足度の変化を予測する証拠は限定的だった。 |
| Journal of Sex Research 2026 | 男性と女性の恋愛関係を対象にした2つの事前登録研究、計943人。S1は二者縦断、S2は個人横断。 | 家事労働の分担、パートナーへの性欲、benevolent sexism(伝統的な性別役割を理想化する態度)。 | 女性は家事労働が多く性欲が低かったが、家事の多さだけで低い性欲を説明する結果ではない。女性ではジェンダー観によって不平等分担との関連が変わった。 |
| Archives of Sexual Behavior 2025 | 恋愛関係が6か月以上続く女性829人。平均32歳、18〜72歳。質問票による横断研究。 | 女性の性欲と、男性は強く女性は弱く欲するなどの異性愛スクリプトの支持。 | 欲求を高く報告した女性ほどスクリプト支持が低く、とくに「男性の性欲は女性より高い」という信念が強く関連した。横断研究なので因果は決めない。 |
| Sex Roles 2026 | 男性パートナーがいる女性・ジェンダー/セックス・マイノリティ女性174人。20〜65歳、関係期間0.58〜40年。オンライン横断調査。 | 性的な圧力の頻度・種類、一般的なパートナーへの欲求、直近4週間のパートナーへの欲求、関係期間。 | 圧力の頻度は一般的・直近の欲求の低さと関連し、関係期間で強さが変わった。感情的な脅しは低い欲求と関連したが、因果・安全な行動の方法は示さない。 |
| Archives of Sexual Behavior 2026 | 恋愛関係にある人を対象にした28の横断データセット11,841人と、8つの日々の経験データセット1,827人。毎日の報告18,321件。 | 性的満足度、性行動の頻度、全般的な関係満足度、パートナーの性的な楽しさ。 | 交際中の女性の性的満足度は男性よりわずかに高かった(r=.08)。性欲や年齢曲線を測った結果ではなく、統合分析の標本構成と小さい効果を分けて読む。 |
※ 研究の「代替対象」は、参加者が想起した対象や質問票上の対象です。関心の報告は、実際の接触や関係上の合意・行動を意味しません。
一般的な性欲と、相手への欲求は同じ指標ではない
CheonとKimの2026年研究は、結婚へ移行する韓国の交際中の成人を2時点で調べました。Time 1は1,058人、Time 2は約1.5年後の655人で、完全な二者データはそれぞれ501組と289組です。一般的な性欲と、現在のパートナーに向いた性欲を分け、関係のウェルビーイングや関係・性的満足度との関連を検討しました。
各時点の横断分析では、一般的な性欲は関係のウェルビーイングと負に関連し、パートナー特異的な性欲は正に関連しました。一方、2時点の縦断分析では、性欲が約1.5年後の関係満足度や性的満足度の変化を予測する証拠は限定的でした。つまり、同じ「性欲」でも対象が違えば関連先が変わり得ますが、横断的な関連を原因や将来予測へ置き換えることはできません。
この研究から読めること
一般的な性欲、特定の相手への欲求、関係の評価を別々に測ると、同じ方向の結果になるとは限らないこと。
この研究から読めないこと
一般的な性欲が高い人は関係に不向きであること、パートナーへの欲求が高ければ関係が続くこと、韓国の結果が全世代・全文化へ当てはまること。
結婚へ移行する韓国のサンプルで、2時点の人数も減っています。性別・年齢の普遍的な比較や、性欲を操作した実験、個人の関係の判定を示す研究ではありません。
家事分担とパートナーへの性欲は、ジェンダー観を含む文脈で読む
Liepmann、Cross、Muiseらの2026年研究は、男性と女性の恋愛関係で、家事労働の分担と性欲の関連にジェンダーに関する態度がどう関わるかを、2つの事前登録研究(計943人)で検討しました。Study 1は二者の縦断研究、Study 2は個人の横断研究です。女性は男性より家事労働を多く行い、性欲を低く報告しました。
しかし、家事労働を多く行うことが全体として低い性欲と結びつく、という単純な結果ではありませんでした。女性では、伝統的な性別役割を理想化するbenevolent sexismが低い、つまりより平等志向のジェンダー観を持つ場合に、不平等な家事分担と低い性欲の関連が最も強く一貫しました。S1は傾向、S2は有意で、benevolent sexismが高い女性ではS2で同じ関連は現れず、S1の一部では家事労働が多いほど欲求が高い報告もありました。
この研究から読めること
パートナーへの性欲を、個人の固定的な性質だけでなく、家事の不平等やジェンダーに関する態度を含む関係の文脈で検討する必要があること。単純な主効果ではなく、誰にどの条件で関連が現れるかを分けて読むこと。
この研究から読めないこと
家事を増減させれば性欲が操作できること、性行為に応じるべきこと、家事分担が欲求低下の唯一の原因であること。年齢曲線、日本の代表値、同性を含む全ての関係形態、個人の診断や関係の判定も示しません。
公平な家事分担は関係の会話や負担の確認に関わるテーマですが、性行為の対価や義務ではありません。家事・欲求・行動・同意・安全は別々に確認し、研究結果を相手への圧力に変えないでください。
「男性の性欲が高い」という脚本と、女性の欲求を混同しない
Smets、Miller、Leysらの2025年研究は、恋愛関係が6か月以上続く女性829人(平均32歳、18〜72歳)を対象に、性欲と異性愛スクリプトの支持を質問票で調べました。ここでいうスクリプトは、男性は性欲が強く主導し、女性は弱く受け身である、といった文化的な性役割の期待です。
欲求を高く報告した女性ほど、こうした異性愛スクリプトへの支持が低い関連を示しました。なかでも「男性の性欲は女性より高い」という考えが、女性の関係内の性欲と特に強く関連しました。つまり、女性の性欲を男女の生物学的な平均差だけで説明せず、性役割の期待がどのように語られ、本人がどう受け止めているかを別の確認事項にできます。
この研究から読めること
恋愛関係にいる女性の性欲と、男性・女性の性欲を固定的に分ける文化的な期待が、同じ質問票研究の中で関連していたこと。ジェンダー規範を「本人の性欲そのもの」と分けて扱うこと。
この研究から読めないこと
異性愛スクリプトを弱めれば性欲が上がること、全ての女性や男性に同じ関係があること、年齢別の男女差や日本の基準値、パートナーの行動・同意・安全を判定できること。
「男性のほうが性欲が高い」という通念を、個人への圧力や性行為の義務に変換しません。欲求、性役割への期待、実際の行動、満足度、苦痛、同意は別々に確認します。
欲求の低下を「本人の身体」だけに帰さず、安全と同意を先に確認する
Chadwick、Brookens、Pavlenko、Clappらの2026年研究は、男性パートナーがいる女性・ジェンダー/セックス・マイノリティ女性174人(20〜65歳、関係期間0.58〜40年)を対象に、性的な圧力と欲求の関連を調べました。研究上の性的な圧力は、相手が望んでいない性行為へ向けた心理的・身体的な圧力や脅しを広く含む定義です。調査は横断的で、因果を証明するものではありません。
圧力の頻度が高いほど、一般的なパートナーへの欲求と、直近4週間の現在のパートナーへの欲求が低い関連を示し、その関連は関係期間が長いほど強くなりました。種類別では、感情的な脅しを経験した人の一般的・直近の欲求が低い関連が示されました。一方、身体的な脅しや薬物・アルコールに関連する圧力は、この小規模な研究では有意な関連が確認されず、信頼区間も広いため「関連がない」とは結論できません。
研究者が「関係内で正常化され得る」と検討した曖昧な圧力の結果は、関係期間によって関連の向きが変わりました。この複雑な結果は、圧力が欲求を保つ方法だという意味ではありません。相手が望まない性行為への圧力は、欲求・同意・安全とは別に、まず安全の問題として扱います。
この研究から読めること
パートナーへの欲求を読むとき、ジェンダー化された関係の力関係や性的な圧力、関係期間を、本人の身体や性欲の強さとは別の文脈として確認すること。一般的な欲求と現在の相手への直近の欲求も同じ指標ではないこと。
この研究から読めないこと
圧力が欲求を高める・維持する方法であること、圧力があっても安全・同意が成立すること、年齢別の性欲曲線や日本の基準値、個人の原因・診断・法的評価を決められること。
断っても圧力や脅しが続く、同意や安全に不安がある場合は、欲求を戻す方法として交渉せず、本人の安全を優先して地域のDV・性暴力相談や緊急窓口につないでください。研究の平均値は、同意の代わりになりません。
満足度が高いことは、性欲が強いこととは違う
Bradyらの2026年研究は、恋愛関係にある人を対象にした28の横断データセット(11,841人)と、8つの日々の経験データセット(1,827人、毎日の報告18,321件)を統合しました。交際中の女性は男性より性的満足度をわずかに高く報告し、効果量は小さいものでした(r=.08)。
補足分析では、女性の満足度が高いことは、性行動の頻度が低いこと、全般的な関係満足度、パートナーの性的な楽しさだけでは説明されませんでした。ただし研究が測った中心的な結果は性的満足度であり、性欲の強さ、パートナーへの欲求、年齢による変化を直接比較したものではありません。大規模な統合結果でも、満足度・欲求・行動の頻度は別の問いです。
この研究から読めること
「女性は男性より性生活に満足しにくい」という通念を、複数データセットの小さな平均差と照合できること。性別の平均差を読むとき、満足度、欲求、行動頻度、関係満足度を別々に確認すること。
この研究から読めないこと
女性の性欲が男性より高いこと、女性の満足度を上げる普遍的な方法、年齢別・日本の基準値、満足度から同意や関係の安全を判定できること。効果量の実生活上の意味も、この研究だけでは確定していません。
性欲が低い、性行動が少ない、満足度が低い、性的な苦痛がある、は同じ訴えではありません。性別平均を個人への期待や性行為の義務へ変換せず、本人の意思と同意を別に確認します。
「性欲がある」を、五つの問いに分ける
「性欲」という言葉は便利ですが、誰に向いた欲求か、どの行動を望むか、どの程度実際に行ったかを一度に表しません。調査票の項目が違えば、同じ人でも結果は変わり得ます。
パートナーへの性欲
今のパートナーと触れ合う、キスする、性行為をするなど、特定の相手に向いた欲求。相手との関係やその日の相互作用と結びつきます。
代替対象への関心
パートナー以外の魅力的な人を想像する、気づく、話す、関心を持つなど。報告された関心は、接触や関係の選択とは別です。
一人の欲求・行動
自慰など、パートナーを必要としない性的な欲求や行動。パートナーへの欲求と同じ方向に動くとは限りません。
満足度・苦痛
性欲の強さではなく、本人が性生活をどう評価するか、また差や変化をどの程度つらいと感じるかというアウトカム。
「一人ではできる/したいのに、パートナーとはしたくない」という一文だけでは、欲求の対象、覚醒、満足度、関係の安全、身体的な痛み、同意の状況までは分かりません。
「相手特異的ではない」という研究は、何を示したか
Petersらの2024年研究は、同じ人の中で日々変化するパートナーへの欲求と、代替対象への関心を分けて測りました。Study 1では、196人・98組の新婚者を、結婚後2年にわたる3波の日記で追跡しました。平均値が高い人と低い人を比べるのではなく、本人の普段からの変化を中心に分析した点が重要です。
Study 2では、長期関係にある成人405人を、パートナーへの性欲を想起する条件、代替対象への性欲を想起する条件、対照条件に無作為に割り当てました。代替対象への性欲を想起した条件では、対照条件よりパートナーへの性欲が高く報告されましたが、この実験は短い想起課題後の自己報告を測ったものです。
研究が支える範囲
パートナーへの欲求と代替対象への関心が、同じ人の中で正に連動する場面があり得ること。相手への欲求を一つの固定的なスイッチとみなさないこと。
研究が支えない範囲
代替対象への関心がある人は浮気すること、パートナーへの欲求がない人は関係を終えるべきこと、想起課題を実生活の行動指示に変えること。
著者らも、二つの研究は自己報告を使い、実際の行動結果までは調べていないと説明しています。Study 1は主に異性の代替対象を測る設計で、すべての関係形態へそのまま一般化できません。
欲求は、関係の相互作用の中でも上下する
Prekatsounakiらの2025年研究は、性的欲求を個人の安定した特性だけでなく、二人の相互作用の中の状態として扱いました。163組のカップルが22日間、パートナーへの日々の欲求と、愛着・性・探索に関するニーズをどう満たしたかを報告し、一部のカップルには相互作用の課題が提示されました。
日々の欲求は、本人が何を与え、受け取り、相手がどう応答したと感じたかと関連しました。女性の欲求には、パートナーが愛着的な相互作用で何を与え、性的・探索的なニーズにどう応答したと本人が感じたかも関連しました。この結果は、関係の相互作用が欲求の変動に関わり得ることを示しますが、特定の会話や行動を全員に処方する研究ではありません。
「パートナーに性欲がない」を本人の魅力や愛情だけの問題にせず、欲求の対象・日々の変動・相互作用・苦痛を分けて確認します。ただし、同意のない圧力を「相互作用の改善」と呼び替えてはいけません。
一人の欲求とパートナーへの欲求は、同じ満足度指標ではない
ParkとMacDonaldの研究は、単身者と交際中の人を含め、一人の性的活動とパートナーとの活動を区別しました。予備研究で572人、二つの追跡研究で1,238人を用いて尺度の不変性を確認し、関係状態をまたいで比較しています。
交際中の人では、パートナーに関わる欲求が高いことと、一人の欲求が低いことが性的満足度と関連しました。また、実際のパートナーとの行動頻度と、望んでいる頻度の差も別に分析されています。これは「一人の行動が多いと必ずパートナーへの欲求が低い」という因果を示す結果ではありません。
研究はCOVID-19パンデミック中のデータを含むため、生活環境・関係状態・性的機会の影響にも注意が必要です。満足度は欲求の強さそのものではなく、本人の評価です。
欲求・想像・行動・同意を一つにしない
論文で代替対象への関心や性的想像が測られていても、それは実際に誰かへ接触すること、パートナーとの合意を破ること、行動を望んでいることを意味しません。同じように、パートナーへの欲求が報告されても、相手がいつでも応じる義務や、頻度の目標が生まれるわけではありません。
研究から分かること
誰に向いた欲求か、日々の変動があるか、欲求と満足度がどう関連するか、相互作用と同時にどう動くか。
研究から決められないこと
関係を続けるべきか、性行為を増やすべきか、他の人と行動すべきか、どちらが「正常」かという個人の判定。
「パートナーにだけ性欲がない」を読む5つの確認
- 誰への欲求か:パートナー、代替対象、一人の活動、一般的な性欲を分ける。
- 欲求か行動か:想像・質問票の回答・実際の頻度・同意のある行動を混同しない。
- いつの値か:一時点の自己報告か、日記で本人の普段との差を追ったか。
- 関係の状態か:相互作用、応答性、家事分担や見えない負担、ジェンダー観・性役割の脚本、性的な圧力・脅し・同意の安全、満足度、苦痛、身体症状、薬やストレスを別の問いとして確認する。
- 因果を急がない:対象への関心を浮気や愛情の判定に、欲求の差を片方の責任に変換しない。
急な変化、強い苦痛、痛み、薬の変更、安全や同意をめぐる不安がある場合は、研究の平均や相手への評価で処理せず、医療機関や信頼できる相談先で個別に扱う境界です。
参考文献
- Peters, S. D., Maner, J. K., & Meltzer, A. L. (2024). Sexual desire is not partner-specific: Evidence for a positive association between desire for one’s romantic partner and desire for alternative partners. Human Nature, 35, 323–346. DOI 10.1007/s12110-024-09478-2 / PMID 39269591
- Cheon, J. E., & Kim, Y.-H. (2026). Dual Nature of Sexual Desire: The Unique Roles of General and Partner-Specific Sexual Desire in Romantic Relationships. Archives of Sexual Behavior, 55(3), 1207–1226. DOI 10.1007/s10508-026-03430-4 / PMID 42053762
- Prekatsounaki, S., Loeys, T., & Enzlin, P. (2025). Understanding the Ebbs and Flows of Sexual Desire: A Daily Diary Study on the Temporal Associations Between Dyadic Sexual Desire and Partner Interactions. The Journal of Sex Research, 62(5), 843–853. DOI 10.1080/00224499.2024.2393378
- Park, Y., & MacDonald, G. (2022). Single and Partnered Individuals’ Sexual Satisfaction as a Function of Sexual Desire and Activities: Results Using a Sexual Satisfaction Scale Demonstrating Measurement Invariance Across Partnership Status. Archives of Sexual Behavior, 51, 547–564. DOI 10.1007/s10508-021-02153-y / PMID 34997399
- Liepmann, A., Cross, E. J., & Muise, A. (2026). Division of Household Labor and Sexual Desire: The Role of Gender and Benevolent Sexism. Journal of Sex Research, 63(8), 1465–1481. DOI 10.1080/00224499.2026.2656775 / PMID 42041453
- Smets, J. W., Miller, S., & Leys, C. (2025). The Impact of Heterosexual Scripts on Women's Sexual Desire in Relationships. Archives of Sexual Behavior, 54(3), 1023–1041. DOI 10.1007/s10508-025-03096-4 / PMID 40011322
- Chadwick, S. B., Brookens, A., Pavlenko, T., et al. (2026). Associations Between Sexual Coercion and Desire Among Women Partnered with Men: The Role of Sexual Coercion Frequency, Type, and Relationship Length. Sex Roles, 92, Article 48. DOI 10.1007/s11199-026-01682-x / 出版社ページ
- Brady, A., Baker, L. R., Maxwell, J. A., et al. (2026). Women Are Slightly More Sexually Satisfied in Their Romantic Relationships Than Men: An Integrative Data Analytic Approach. Archives of Sexual Behavior, 55(1), 289–311. DOI 10.1007/s10508-025-03317-w / PMID 41670901 / 出版社ページ
出典は2026年9月16日にPubMed・DOI・Springer出版社本文の書誌情報と抄録を確認しました。研究の要約は日本語で再構成したもので、原文の長い引用ではありません。
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