RESEARCH GUIDE / 2026.08.12

低い性欲を、
苦痛と原因に分ける

性欲が低いと感じたら、それだけで病気なのでしょうか。研究で「低い性欲」と「本人が苦痛を感じていること」は別に測られ、年齢、性行動、関係性、薬、気分、身体症状も影響します。HSDDという略語が使われる研究を、自己診断や一律の治療指示に変えず、何が臨床的な相談対象になり得るのかを読み解きます。

公開日 2026年8月12日 / 最終更新 2026年9月16日 / 欲望の時間割 編集部

低い性欲と、苦痛を伴う性欲低下は同じではない

大規模なオーストラリア研究では、低い性欲は18〜79歳で年齢とともに増えましたが、低い性欲と性的苦痛を合わせた研究上のeHSDDは40〜64歳で高く、その後は低下しました。若い人では性的な苦痛があっても低い性欲とは限らず、年齢が高い人では欲求が低くても本人の苦痛が同じように高いとは限りません。

「HSDD」は研究や時期によって使われる定義・名称が異なります。研究では、低い欲求に加えて一定以上の苦痛を条件にしたり、他の身体・精神・薬剤・関係性の要因を評価したりします。低い性欲だけを見て自己診断するのではなく、持続期間、本人の困りごと、他の変化、同意と安全を含めて医療者と相談する問題です。

2026年の系統的レビュー・メタ分析でも、治療結果は一つの「性欲スコア」へまとまりませんでした。マインドフルネスを含む認知行動療法、フリバンセリン、ブレメラノチドで改善が示された領域はありますが、対象・尺度・薬の比較が異なり、痛みを含む性機能障害や全ての低い性欲へそのまま広げられません。

2026年掲載の中国女性3,443人調査は、低い性欲の自己報告、苦痛、増やしたいという希望が同じ割合ではないことを示しました。データは2020年のオンライン横断調査で、性欲の低さを一つの病名や一つの原因へ変換せずに読むための比較材料です。

Kroghらの2026年縦断研究は、新たに双極症と診断された236人(18〜68歳)を6か月観察し、抑うつ症状・躁症状・日々の気分不安定性と性欲、性的苦痛を同じ時間軸で分析しました。抑うつ症状が高いほど性欲は低く、性的苦痛は高い関連が、躁症状が高いほど性欲が高い関連が報告されました。気分不安定性は性的苦痛と関連しましたが、性欲の変化は個人差が大きく、これは双極症の人全員の性欲や行動を予測するルールではありません。

Parkらの2026年混合研究は、「性欲が低い」こと自体ではなく、自分のlibidoをどう心配しているかを調べました。Science Vs podcastのソーシャルメディアから集まった1,317人のオンライン調査で、752人(57.1%)がlibidoへの心配を報告しました。この割合は自己選択サンプルの心配の割合であり、低い性欲やHSDDの有病率ではありません。

Camposらの2026年プレレジスター無作為化試験では、直近4週間に異性のパートナーがいた異性愛者60人を、4週間にわたり少なくとも週2回性的な物語を書く群30人と、非性的な肯定的物語を書く対照群30人へ割り付けました。性欲、快感、パートナーを思い描く鮮明さはファンタジー群だけで増え、性的苦痛と性行為中の身体イメージ・パフォーマンスへの心配は減りました。ただし、小規模な便宜抽出で、臨床集団や長期効果を示す試験ではありません。

低い性欲と苦痛を、研究デザインごとに分ける

研究対象・方法測ったもの主な読み方
West et al.
2008
米国の全国代表に近い世帯確率標本。安定した関係にある30〜70歳の女性2,207人を電話調査。Profile of Female Sexual Functionの欲求領域、Personal Distress Scale、閉経状態。低い性欲とHSDDを別に推定。低い性欲は自然閉経後で高く、HSDDは外科的閉経群で高かった。関係にある人に限る設計。
Zheng et al.
2020
オーストラリアの地域女性10,554人、18〜79歳。PFSF・FSFIの低い欲求とFSDS-Rの苦痛を組み合わせた横断研究。低い欲求、性的苦痛、研究上のeHSDD、年齢、関係性、性活動、向精神薬。低い欲求は年齢とともに増えたが、eHSDDは40〜64歳で高く、その後低下。若年の苦痛と中年期のeHSDDを同じ曲線にしない。
Kingsberg et al.
2019
HSDDと評価された閉経前女性を対象にしたRECONNECT二つの第3相無作為化比較試験。24週間。FSFI欲求領域、低い欲求に関連するFSDS項目、満足できる性行為、安全性。ブレメラノチド群は欲求と関連苦痛をプラセボより改善したが、診断・選択基準のある試験。一般の低い性欲への自己使用の根拠ではない。
Lerner et al.
2022
HSDDと診断された女性106人。8週間の集団認知行動療法53人と待機リスト53人のパイロット無作為化研究。FSQQの欲求・関心、前戯、興奮、快適さ、オルガズム・満足。CBT群で複数領域が改善した。ブラジルの選択された小規模試験で、全ての低い性欲の原因や治療を決めない。
Thurston et al.
2022
HSDDの閉経前女性40人を、キスペプチン注入とプラセボへ割り付ける二重盲検クロスオーバー研究。両方を完了したのは32人。性的映像・魅力度画像への脳反応、心理指標、ホルモン、苦痛との関連。脳処理の変化を示す機序研究で、日常の性欲を治す臨床試験や自己投与の根拠ではない。
Toledo et al.
2026
女性の欲求・覚醒・オルガズム機能障害を対象にした系統的レビュー・メタ分析。36研究(26 RCT、10単群)で、痛みを含む研究は除外。FSFIの欲求・覚醒・オルガズム領域、FSDS、CBT・薬・デバイス。マインドフルネスCBTは複数のFSFI領域、フリバンセリンは総合FSFIと欲求、ブレメラノチドは総合FSFI・欲求・覚醒を改善。CBTと薬を直接比較した試験はない。
Campos et al.
2026
直近4週間に異性のパートナーがいた異性愛者60人。4週間のプレレジスターRCTで、性的な物語を書く群30人と、非性的な肯定的物語を書く群30人。性欲、性機能、性的快感、性的苦痛、身体イメージ・パフォーマンスへの心配、パートナーを思い描く鮮明さ。群×時間の交互作用が有意で、ファンタジー群だけ欲求・快感・想像の鮮明さが増え、性的苦痛・心配が減った。小規模な便宜抽出で、HSDDの臨床試験、長期効果、全員への自己治療を示さない。
Sexual Medicine
2026
中国の成人女性3,443人。2020年4〜7月のオンライン横断調査で、中央値26歳(四分位範囲23〜30)。低い性欲、自己報告の要因、満足度・苦痛・増やしたい希望、DSDSを改変したHSDD症状。低い性欲の報告は43.9%、主な要因はストレス・疲労53.6%。「困っている」40.2%、「増やしたい」63.6%、研究基準でHSDD高リスク5.7%で、同じ概念ではない。
Krogh et al.
2026
新規診断の双極症236人、18〜68歳。6か月縦断、3回の評価のうち181人が全て完了。線形混合モデル。CSFQ-14の性欲、Sexual Distress Scaleの性的苦痛、HDRS-17・YMRS、スマートフォンの日々の気分評価。抑うつ症状は低い性欲・高い苦痛、躁症状は高い性欲、気分不安定性は高い苦痛と関連。関連は気分症状の変化を読む材料で、原因・診断・安全な行動の判定ではない。
Park et al.
2026
Science Vs podcastチームのソーシャルメディアから募集した1,317人の混合研究オンライン調査。知覚した性欲の程度と心配、ジェンダー、性的指向、関係ステータス、年齢、自由記述のテーマ。752人(57.1%)が心配を報告。心配を報告した752人の内訳は、低すぎる47.5%(357人)、パートナーとの不一致42.4%(319人)、高すぎる7.6%(57人)。母集団の低い性欲率や診断率ではない。
ACOG女性の性健康に関する公的患者向け案内。欲求、覚醒、オルガズム、痛み、薬、抑うつ・不安・ストレスを分けて説明。持続期間、本人の不安・悲しみ、性欲が始まる時点、痛み、薬や病気の影響。低い欲求だけを病名にせず、持続する困りごとや原因候補を医療者と評価する相談境界を示す。

※ 研究ごとに年齢、パートナー条件、性的活動の定義、質問票、苦痛のカットオフが異なります。割合や診断条件を自分へそのまま当てはめません。

「性欲が低い」を六つに分ける

低い性欲という一言の中に、違う問いが混ざります。相談や研究では、本人の言葉を一つの病名へ急いで置き換えずに分解します。

欲求の強さ・頻度

性への考え、空想、始めたい気持ち、受け入れたい気持ち。どの対象への欲求か、一人か相手かも分けます。

苦痛・困りごと

本人が不安、悲しみ、苛立ち、喪失感、関係上の困難を感じているか。低い欲求と別に測る中心的な指標です。

持続期間・変化

いつから、急にか徐々にか、以前からか、月経・妊娠・更年期・薬の開始と重なるかを確認します。

覚醒・潤滑・痛み

欲求があっても覚醒や潤滑、痛みが問題になることがあります。低い欲求だけで身体症状を説明しません。

性行動・機会

性行為の頻度や性活動の有無は、パートナー、同意、時間、健康、機会の影響を受けます。欲求の代理ではありません。

原因候補・除外

抑うつ、不安、ストレス、疲労、薬、ホルモン、病気、関係性、痛み、性的トラウマなど複数の経路があります。

苦痛がない低い性欲を、本人の価値観や同意を無視して「治すべき異常」と決めません。苦痛があるときも、欲求を増やすことだけを目標にしません。

年齢の曲線と、苦痛の曲線は同じではない

Zhengらの10,554人研究では、低い欲求の割合は18〜24歳の27.4%から75〜79歳の91.6%へ増えました。一方、低い欲求と苦痛を合わせたeHSDDは18〜24歳の12.2%から40〜44歳の33.4%へ増え、60〜64歳までおおむね同じ水準の後、75〜79歳で7.3%へ低下しました。これは年齢が上がるほど全員が同じ変化をするという意味ではありません。

若い人では、性への期待、関係性、体験、文化、心理的負担などが苦痛に関わる場合があります。中年期では、低い欲求と本人の苦痛が重なる人が相対的に多いという研究結果がある一方、閉経や身体症状、薬、関係性などを個別に確認する必要があります。年齢の平均を個人の診断基準にしません。

低い欲求がある

性への関心や開始意欲が少ないという自己報告。本人が困っているか、いつからか、他の症状があるかは別に確認します。

苦痛がある

自分の望みと違う、関係性に影響する、悲しさや不安が続くなど、本人が相談を望む理由。欲求の量だけでは測れません。

「HSDDか」を先に決めず、背景を確認する

研究上のHSDDは、低い欲求だけでなく、本人の苦痛や一定期間の症状を含めて分類されます。さらに、薬や物質、抑うつ・不安、身体疾患、ホルモン変化、痛み、関係性、望まない性行為や安全の問題が関わる場合は、原因候補を別に評価します。分類名をつけることが、体験の説明を一つに固定することではありません。

大規模研究では、eHSDDがパートナーあり、性的に活動していない、教育年数が長い、向精神薬を使う人と関連しました。これはパートナーや薬が原因だと証明したものではなく、相談時に関係性・性活動・薬・気分を同時に尋ねる必要を示す関連です。

「パートナーがいるから苦痛」「薬を飲んでいるから原因」と短絡しません。本人の意思、同意、関係の安全、服薬の必要性を尊重して、医療者と一緒に整理します。

治療試験の結果を、一般の低い性欲へ広げない

ブレメラノチドの第3相試験は、HSDDと評価された閉経前女性1,267人を24週間無作為化し、欲求領域と欲求に関連する苦痛を別々に測りました。薬群はプラセボより改善しましたが、吐き気、ほてり、頭痛などの有害事象も多く、診断・選択基準のある臨床試験です。研究記事を読んで自己判断で薬を使ったり、現在の薬を止めたりする根拠にはなりません。

集団認知行動療法のパイロット無作為化研究でも、HSDDと診断された106人の複数の性機能領域が改善しました。身体の痛み、抑うつ、不安、関係性、安全、薬などで必要な支援は変わります。治療は「性欲の数字」を上げる競争ではなく、本人が望む性や親密さを安全に取り戻せるかを含めて考えます。

キスペプチン研究は脳反応を調べた少人数の機序研究です。脳画像の変化は、日常の性欲の診断や市販・自己投与の根拠ではありません。

性的ファンタジーの課題を、短期RCTの結果として読む

Camposらの研究は、性的ファンタジーを一時的な気分の話ではなく、4週間の反復課題として検討しました。直近4週間に異性のパートナーがいた異性愛者60人を、少なくとも週2回性的な物語を書く群と、友人との食事について非性的な肯定的物語を書く対照群へ無作為に割り付け、intention-to-treatで分析しています。

プレレジスターした主要アウトカムと探索的アウトカムの群×時間の交互作用は有意でした。性的ファンタジー群だけで性欲、性的快感、パートナーを思い描く鮮明さが増え、性的苦痛と性行為中の身体イメージ・パフォーマンスへの心配が減りました。欲求、快感、苦痛、心配を同じ「性欲スコア」にまとめず、別のアウトカムとして読む点が重要です。

この研究から読めること

無作為化された小規模試験では、指定された課題と対照課題の4週間後に、欲求・快感・想像の鮮明さ・性的苦痛・心配の変化が異なったこと。短い心理的課題を検証する際に、欲求と苦痛を同時に測る設計です。

この研究から読めないこと

HSDD、性交痛、抑うつなどの臨床集団への効果、年齢・ジェンダー別の効果、長期的な持続、同意や安全性の判断、全員に性的ファンタジーを勧める治療指示。対象は異性愛者で、特定のパートナー条件がありました。

性的ファンタジーがあることは、実際の性行動への同意や望みを意味しません。研究の課題を始めるか、どのような親密さを望むかは本人の選択であり、苦痛が続く場合は自己実験より相談を優先します。

治療の比較は、欲求・覚醒・オルガズムを分けて読む

Toledoらの2026年レビューは、痛みを伴う条件を含めず、女性の性的欲求・覚醒・オルガズム機能障害に対する治療を整理しました。MEDLINE、Embase、Web of Science、Cochrane Library、PsycINFO、ClinicalTrials.govを検索し、8,994件の抄録から278件の全文を確認、36研究を採用しました。そのうち26研究が無作為化比較試験、10研究が単群試験で、認知行動療法10研究、薬物24研究、デバイス2研究でした。

心理的介入

マインドフルネスを含む認知行動療法は、総合FSFIと欲求・覚醒・オルガズムの下位領域を改善し、性的苦痛も減らしました。ただし、介入内容や対象、追跡期間が同じではありません。

薬物療法

フリバンセリンは総合FSFIと欲求、ブレメラノチドは総合FSFI・欲求・覚醒を改善し、いずれも苦痛の低下が示されました。CBTと薬物を直接比較した試験はなく、どちらが優れるかは決められません。

レビューの結論は、全ての治療が同じように有効という意味ではありません。多くの介入は研究数が少なく、DAO障害の用語、質問票、対象集団、痛みの扱いが異なります。低い性欲だけを自己診断して薬を選ぶ根拠ではなく、本人の苦痛、痛み、気分、関係性、安全、既存の薬や病気を医療者と分けて確認するための研究地図です。

このレビューは「性欲を上げる方法」のランキングではありません。欲求、覚醒、オルガズム、苦痛を別々のアウトカムとして読み、薬の開始・中止・変更や、治療を受ける必要性を記事だけで決めないことが重要です。

「増やしたい」と「苦痛がある」は、同じ質問ではない

Luoらの2026年掲載研究は、中国の成人女性3,443人を対象に、2020年4〜7月にオンライン横断調査を行いました。回答者は都市部・妊娠可能年齢の女性が中心で、年齢の中央値は26歳(四分位範囲23〜30歳)でした。DSDSを改変した質問で、低い性欲の自己報告、主な要因、満足度・苦痛・性欲を増やしたい希望を尋ねています。日本の女性や現在の人口全体の割合ではありません。

低い性欲を報告した人は43.9%で、主な自己報告要因はストレス・疲労が53.6%でした。一方、性欲に不満がある人は18.8%、低下に「困っている」人は40.2%、性欲を増やしたい人は63.6%、研究上の基準でHSDD高リスクと分類された人は5.7%でした。多くの人が複数の要因を挙げており、「増やしたい」という希望を、そのまま臨床的な苦痛や診断へ読み替えられません。

ストレス・疲労や仕事の圧力は自己報告の関連要因で、性欲を下げた因果効果の証明ではありません。データ収集はCOVID-19流行中の2020年で、オンライン便宜抽出、横断設計、未検証部分のある改変質問票、症状の持続期間を測っていない限界があります。研究結果を自分の診断や、薬・治療の自己判断へ変えず、いつから何に困るかを医療者へ伝えます。

双極症では、性欲と性的苦痛を気分の一方向の曲線にしない

KroghらのBIDISEX研究は、新たに双極症と診断された236人を6か月追跡しました。年齢は18〜68歳で、181人が3回すべての評価を完了しました。性欲はChanges in Sexual Functioning Questionnaire(CSFQ-14)、性的苦痛はSexual Distress Scaleで測り、抑うつ症状(HDRS-17)、躁症状(YMRS)、スマートフォンによる日々の気分評価と関連づけました。

抑うつ症状が高い評価ほど、性欲の低さと性的苦痛の高さに関連しました。躁症状が高い評価ほど性欲が高い関連も報告され、気分不安定性は性的苦痛と関連しました。著者らは、気分エピソードの最中だけでなく、その間の性の困りごとも評価する必要性を示しています。これは、性欲の高低から躁状態を自己判定したり、性欲の高まりを安全・同意・望ましい行動と同一視したりする根拠ではありません。

この研究から読めること

抑うつ・躁症状・気分の不安定性と、性欲・性的苦痛が時間の中で関連し得ること。性欲の変化を、性機能や苦痛と一緒に評価する視点。

この研究から読めないこと

双極症の全員に同じ性欲の変化が起きること、性欲が気分症状の原因や診断テストになること、薬の効果・副作用や性的行動の安全性をこの研究だけで決めること。

3回の評価を全て完了した人は181人で、脱落もありました。新規診断のデンマークの臨床研究であり、日本の人口全体、年齢別の標準、性別の普遍的な差を示す研究ではありません。抑うつや躁の症状、性欲、性的苦痛の関連は観察的な関連で、気分症状が性欲を一方向に変える因果を確定しません。

「性欲が低い」と心配することを、低い性欲そのものと同じにしない

Parkらの2026年研究は、これまで多く扱われた「低い性欲」やパートナーとの欲求差ではなく、本人が知覚したlibidoをどう評価し、何を心配しているかを対象にしました。Science Vs podcastチームのソーシャルメディアから参加者を募る混合研究オンライン調査で、ジェンダー、性的指向、関係ステータス、年齢による違いも検討しています。

1,317人のうち752人(57.1%)がlibidoへの心配を報告しました。その752人の中では、低すぎると感じる心配が357人(47.5%)、パートナーと一致しない心配が319人(42.4%)、高すぎると感じる心配が57人(7.6%)でした。自由記述では、低いlibido、欲求の変動、「普通」のlibidoとは何か分からないことがテーマになりました。複数の心配が重なる可能性があるため、内訳を足して一つの割合にしません。

この研究から読めること

「低い」「高い」「相手と合わない」「変動する」「普通か分からない」という本人の感じ方が、別々の相談の入口になり得ること。性欲の多様性を知り、相手と話すことの重要性。

この研究から読めないこと

57.1%を一般人口の有病率にすること、低すぎる47.5%を全参加者の低い性欲率にすること、年齢・ジェンダー・性的指向から個人の正常値や原因を決めること。

抄録は年齢・ジェンダー・性的指向・関係ステータスによる違いを検討したとしますが、ここで確認できる情報だけでは各群の方向や基準値を示せません。ポッドキャストのソーシャルメディア経由の自己選択サンプルで、自己報告の心配を扱う研究です。これはHSDDの診断率、性的苦痛尺度の有病率、原因や治療効果を測るものではありません。

相談するときは、病名より体験を伝える

性欲の変化が続いて苦痛がある、急に変わった、薬の開始・中止と重なる、抑うつや不安がある、乾燥・痛み・出血・感染がある、望まない性行為や安全上の問題がある場合は、婦人科、かかりつけ医、性医学・心理支援などへ相談します。ACOGも、欲求、覚醒、オルガズム、痛み、薬、ストレスや気分を分けて評価する案内をしています。

相談前に、いつから、どの場面で、どの程度困るか、欲求・覚醒・痛み・満足度・睡眠・気分・薬・月経や更年期の変化を簡単に記録しておくと、原因を一つに決めずに話しやすくなります。相手の期待だけを基準にせず、本人の同意と望みを中心にします。

この記事はHSDDや女性の性機能障害の診断を行うものではありません。自傷の考え、暴力や強制、急な強い痛み・出血など安全に関わる状況がある場合は、通常の性欲スコアではなく、地域の緊急・医療支援へ。

研究が教えないことを、先に線引きする

  • 低い性欲があるだけで、必ず病気・障害・治療対象になるということ。
  • 研究上のeHSDDやHSDDの割合を、自分の診断やパートナーの評価へそのまま置き換えること。
  • 年齢、閉経、性行動、パートナーの有無、向精神薬との関連を、単一の原因や本人の責任へ変えること。
  • 治療試験の平均的な欲求・苦痛の変化を、全ての低い性欲や全ての年齢層へ一般化すること。
  • 2026年レビューのCBT・薬物・デバイスの結果を、痛みのある性機能障害、全ての年齢、自己診断した低い性欲へ広げること。レビュー内でも直接比較や十分な研究数がない介入は残っています。
  • 中国女性3,443人の2020年オンライン調査の「低い性欲」「困っている」「増やしたい」「HSDD高リスク」を、日本の女性、現在の人口、確定診断、因果関係へそのまま置き換えること。質問票の改変、症状期間の未測定、COVID-19中のデータ収集にも注意が必要です。
  • Parkらの1,317人調査で「心配あり」57.1%、その中の「低すぎる」47.5%を、一般人口の低い性欲率、HSDD率、性的苦痛率、年齢・ジェンダー別の正常値へ置き換えること。自己選択サンプルで、複数の心配が重なり得ます。
  • Camposらの2026年RCTを、異性愛者で直近4週間に異性のパートナーがいた成人60人の小規模便宜抽出から、HSDD、性交痛、臨床集団、長期効果、年齢・ジェンダー別の効果、同意・安全性、全員への自己治療へ広げること。抄録から具体的な年齢範囲・男女別人数も確認できません。
  • 本人の同意や望みを確認せず、性欲を高くすることだけを健康の目標にすること。

低い性欲と苦痛を分けることは、困っている人の相談を軽く扱うためではありません。本人の体験を、年齢・関係性・薬・身体・気分の一つに押し込めず、必要な支援へつなぐためです。

参照した一次研究と公的資料

  1. West SL, D'Aloisio AA, Agans RP, Kalsbeek WD, Borisov NN, Thorp JM. Prevalence of low sexual desire and hypoactive sexual desire disorder in a nationally representative sample of US women. Arch Intern Med. 2008;168(13):1441–1449. DOI: 10.1001/archinte.168.13.1441. PMID: 18625925.
  2. Zheng J, Islam RM, Bell RJ, Skiba MA, Davis SR. Prevalence of Low Sexual Desire With Associated Distress Across the Adult Life Span: An Australian Cross-Sectional Study. J Sex Med. 2020;17(10):1885–1895. DOI: 10.1016/j.jsxm.2020.07.007. PMID: 32773344.
  3. Kingsberg SA, Clayton AH, Portman D, Williams LA, Krop J, Jordan R, Lucas J, Simon JA. Bremelanotide for the Treatment of Hypoactive Sexual Desire Disorder: Two Randomized Phase 3 Trials. Obstet Gynecol. 2019;134(5):899–908. DOI: 10.1097/AOG.0000000000003500. PMID: 31599840.
  4. Lerner T, Bagnoli VR, de Pereyra EAG, Fonteles LP, Sorpreso ICE, Soares Júnior JM, Baracat EC. Cognitive-behavioral group therapy for women with hypoactive sexual desire: A pilot randomized study. Clinics. 2022;77:100054. DOI: 10.1016/j.clinsp.2022.100054. PMID: 35905577.
  5. Thurston L, et al. Effects of Kisspeptin Administration in Women With Hypoactive Sexual Desire Disorder: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2022;5(10):e2236131. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2022.36131. PMID: 36287566.
  6. Toledo RG, Winkelman WD, Reyes-Gonzalez D, et al. Female Sexual Desire, Arousal, and Orgasmic Dysfunctions: A Systematic Review and Meta-Analysis of Treatment Options. J Minim Invasive Gynecol. 2026;33(1):16–33.e3. DOI: 10.1016/j.jmig.2025.06.004. PMID: 40543759.
  7. Luo L, Fu T, Huang J, Li H. Decreased sexual desire and distress symptoms: an analysis among urban Chinese women. Sex Med. 2026;14(3):qfag018. DOI: 10.1093/sexmed/qfag018. PMCID: PMC13092269. 出版社ページ.
  8. Krogh HB, Bruun CF, Zarp J, Faurholt-Jepsen M, Kessing LV, Giraldi A, Vinberg M. The impact of affective symptoms and mood instability on sexual desire and sexual distress in newly diagnosed bipolar disorder: a longitudinal study. Journal of Psychiatric Research. 2026;201:409–417. DOI: 10.1016/j.jpsychires.2026.06.006 / PMID 42385293.
  9. Park JT, Levang SL, Garas M, Terrell B, Zukerman W, Pukall CF. Worrying About Low Libido: A Mixed-Method Evaluation of Sexual Desire Across Gender, Sexual Orientation, and Relationship Status. J Sex Marital Ther. 2026;52(5):513–529. Epub 2026 May 22. DOI: 10.1080/0092623X.2026.2666147. PMID: 42169615.
  10. Campos P, Leal I, Costa RM. The role of sexual fantasy on sexual desire, distress, and sexual worries: a randomized controlled study. J Sex Med. 2026;23(5):qdag097. DOI: 10.1093/jsxmed/qdag097. PMID: 41996557.
  11. American College of Obstetricians and Gynecologists. Your Sexual Health. 公的患者向け案内。参照日 2026-08-12.

参照日は2026年9月16日。研究の定義、苦痛の測定、対象集団、治療試験の選択基準、自己診断できない限界を確認し、低い性欲を一律の病名・治療指示へ言い換えていません。

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